闇の中からタクシーが現れる。乗っているのは、顔つきが濃い目なイケメン。ハートの矢を持った彼は、恋のキューピッドらしい。イタリアではタクシー運転手が愛も運ぶのだ。
彼が物語るのは、青年、熟年、老年の三つの恋である。ローマのアパートに住む男女が繰り広げる、それぞれの愛の形を描く。『昼下がり、ローマの恋』というよくわからない邦題が付けられているが、原題は『Manuale d'amore 3』で、直訳すれば「恋愛マニュアル3」だ。シリーズ物なのである。1と2がヒットしたおかげで、ぜいたくなキャスティングが実現した。
ロバート・デ・ニーロは名前でわかるようにイタリア系だが、純イタリア映画に出演するのはこれが初めてなんだそうだ。役のために太ったり痩せたりするカメレオン俳優として名高いが、この映画ではいわゆる等身大の役どころである。アメリカ人の元歴史学者で、妻と別れてローマに一人で移り住んでいる。彼のイタリア語がどのくらい達者なのかはわからないが、英語のほうが流暢(りゅうちょう)という設定だから無理がない。
お相手を務めるのは、“イタリアの宝石”ことモニカ・ベルッチだ。よわい40を超えてもセクシー爆弾ぶりは健在で、登場するやいなや男を狂わせる危険な香りがぷんぷん漂ってくる。恋愛沙汰のいざこざが出来(しゅったい)するのは、火を見るより明らかだ。ご老体のデ・ニーロは心臓を患っているという設定だから、ベッドシーンは俄然(がぜん)人命のかかったサスペンスをはらむのだ。